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『大きな鳥にさらわれないよう』ネタバレ・考察・解説(第2章/全14章)

前段

前回から川上弘美さんの『大きな鳥にさらわれないよう』を読んでいます。

ジャンルはポストアポカリプスと言って、現在の文明や人類が滅びた後の世界を描いたものとなります。

まだ第1章を読み終えたところなので、世界観の全貌は把握しきれておりませんが、少なくとも現代とは大きく異なる世界観だということがわかります。

第1章に関しては、奇妙に世界観に触れてもらいたいため、ネタバレを読むことを推奨しております。

勿論、本を購入して読み始めていただいても構いませんが、ネタバレを読んで気になったら本を購入して頂くのでも遅くはないかと思っています。

 

第1章のネタバレが書かれた記事はこちらをご覧ください。

 

sukosukoscorpion.hatenablog.com

 

 

それでは、第2章のネタバレになります。

 

 


第2章:水仙

 


◆主人公

第1章とは異なる人物です。

時系列および場所は第1章と同じで、この地域では"回転木馬の係員"に勤めています。

※この職業については後ほど記載していきます。

主人公も現代と比べると特殊な人間で、クローンとして作られた人間です。

第1章で出てきた工場で作られたかどうかは定かではありませんが、誰かが意図的に作ったのは間違いないでしょう。

主人公と同じように作られた人間は、主人公が生きていく中で複数体登場します。

 

第2章では主人公の一生を描いた物語で、大きく分けて二つの舞台に分かれます。

 

◆家での生活

一つ目の舞台は「家での生活」です。

主人公は物心ついた頃からこの家に住んでおり、25歳になると旅立ちます。

家には、自分以外の全く同じ遺伝子を持つ人間と育ての親である「母たち」と過ごしていました。

 

まずは、母たちからご説明します。

母たちは主人公たちを育てるために家にいます。

もしかするともっと別の目的があるのかもしれませんが、この章では特にそういった内容を匂わせる文章はありませんでした。

母たちは不定期に入れ替わります。

どこから来るのか、どこへ去るのかはわかりません。

母たちは一般常識を主人公たちに教えていきますが、気になる内容を繰り返し発言しています。

「注意深く観察すること。結論はすぐに出さないこと。けれど、どんなに細かなこともおろそかにせず記憶に留めておくこと」

何を示唆しているのかはわかりませんが、主人公たちはこの教えを守っていきます。

 

主人公は同じ遺伝子のクローン人間2人と生活し成長していきます。

物心つく前は全員で10人いたらしいが、他7人は既に死んでしまったとのこと。

成長速度に違いはあれど、成人に近づくにつれ母たちを欺けるほど見分けがつかなくなっていきます。

家では家事はすべて母たちが行っており、主人公たちは勉強したり外で遊んだりして過ごしていました。

特に興味深いことは"コンピュータ"があることだ。

通信ができることから、インターネットのような通信網が形成されている可能性が高いと思われます。

第1章と第2章の途中まで読んでいて、なんとなく文明レベルが現代と比べてかなり落ちていると思っていたから衝撃は大きかったです。

 

そして、主人公は25歳になると一人だけ旅経ちます。

向かった先は"町"です。

 

◆町での生活

家から旅立って3ヶ月ほど経過したときに町にたどりつきました。

町にはこのクローンたち専用の家があり、交代制で住んでいるのがわかります。

主人公が町についたとき、主人公より年老いたクローン人間がいて、何年もその家で過ごしていました。

2か月ほど一緒に暮らし、年老いたクローンは町を出ていきます。

どこに向かったかはわかりません。

ですが、今までも何年も何年も同じようにクローン人間が入れ替わっていたのだろうと想像がつきます。

主人公が年老いたころ、若いクローンが訪ねてきて一緒に暮らし、そして主人公は町から出ていきます。

このサイクルの理由はこの章の最後まで明かされませんでした。

 

回転木馬の係員

主人公含むクローンたちはこの町では"回転木馬の係員"として働いています。

実はこの回転木馬の係員は第1章でも登場しています。

情景の一部として簡単に説明されていましたが、このことにより第1章と第2章が同じ舞台だということがわかります。

主人公たちクローンはこの仕事はあくまで"表むきの仕事"と言っています。

どうやら"見守り"をするのが真の目的のようです。

主人公たちが幼少のころから母たちに教わったことはここで活かされてきます。

これらの情報から以下の疑問がわくと思いますが、その理由は明かされていません。

 

● 誰も見守っているのか。

● 見守りとは何を目的としているのか。

 

「見守りをするのに公園はちょうどいい」という発言があるため、1個目はおそらく子供を見守っているのだと考えられます。

しかし、2個目は考えてもわかりません。

主人公たちクローンを何を警戒して見守っているのか。

歴史を紐解く過程でそれがわかるのを期待しています。

 

水仙

さて、あらかた第2章の内容は話してしまったのですが、最後に章の題名となっている"水仙"を簡単にご説明します。

 

まだ主人公が母たちと家で過ごしていた頃、母たちのうち"大きな母"と呼ばれる人を主人公は愛していました。

他の母たちと同じく誰かと入れ替わりでこの家に来て、何年かしたら家から立ち去ってしまいます。

大きな母にはいろいろお世話になったらしく、コンピュータの使い方を教えてくれたのも大きな母です。

 

大きな母が家から去ったことが主人公にとって一番忘れられない出来事だと語っています。

それほど大きな母を愛していたのでしょう。

大きな母を見送った場所には白い水仙が咲き乱れており、大きな母の顔はぼんやりとしか覚えてないけど匂いははっきりと覚えていました。

その匂いが水仙の花と同じ匂いだったとか。

 

主人公にとって水仙は思い出の花だということがわかります。/span><

 


まとめ

さて、第1章に引き続き第2章を読んでみましたが、まだ世界観は掴み切れていないです。

この調子だと多分第3章以降を読んでもまだまだ世界観を掴めないような気がします。

 

それにしても、この世界に人間は今の私たちと全然違うということがわかります。

人間が工場で作られたりとか、別の動物の遺伝子が組み込まれていたりとか、はたまた全く同じ遺伝子を持つクローン人間まで出てきましたからね。

同じ人間とは到底思えないです。

その割に"性別"の概念はしっかりあるのが疑問です。

第1章の主人公は女で、第2章の主人公は男でした。

こんな世界になっても性別が存在することに何か意味はあるのでしょうか…?

 

 

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